あたたかな日差しの休日の午後、以前から訪れてみたいと思っていた小さなギャラリーを独り訪問してみました。私にとっては休日ですが、世間のほとんどの人は、働くウィークデイです。今日は、特別日と称して有給を消化してみます。森の中にあるそのギャラリーのチケット売り場には、数名の団体さんがいました。皆、畏まったスーツ姿であったので、何かしらの関係者の方々なのかもしれないと思っていると、自分がチケットを購入する番になりました。本日は申し訳ありませんが、メインの常設展は都合の為、閉鎖させて頂いております。企画展の「包装」がテーマの展示のみになりますが宜しいですか?と売り場のお姉さんが、申し訳なさそうに聞くので、こちらも改まって、もちろんですと返答してしまいました。ギャラリーを訪れた目的は、実は、企画展の「装飾」に興味が引かれたからなのです。サイトなどで、事前に詳細を確認してから来た訳ではないので、メイン展示がお休みであっても、館内のギャラリー内部や企画展を見学できれば、自分にとっては十分でした。チケットを購入すると、細い廊下がありそのまま進むと、急に前が開け、森の中に溶け込むようなギャラリーの全体が現れました。なんとも、その空間と空気に包まれているギャラリー内部でした。一瞬で自分もその部屋の一部のような、存在としての感覚に陥りました。ギャラリー内には、先ほどのスーツ姿の団体さんも居ましたが、皆がその部屋の一部のように、落ち着いた会話と息遣いで沈黙が流れていました。音楽などは流れていないのですが、室内に入り込む窓からの日差しの温もりが、何か別の存在を感じさせてくれました。部屋の内部を歩き、様々な角度から入り込む日差しの色彩に包まれながら、来た方角とは別のドアをながめると学芸員風の女性が立っていました。女性の居るドアに向かって歩き出すと、「メイン展示への廊下は、本日お使い頂けません。」と声を掛けて下さいました。その一声とともに、団体さんも動き出し始めました。前方のまた別ガラスの扉に進むと、そこはギャラリーの庭園とも言える、森に続く出口扉でした。スーツ姿の団体さんとともに、ガラスの扉からギャラリーを出て森の庭園の中を歩くと、軽やかな風が吹き始めました。「包装」がテーマという企画展でしたが、特に、作品が展示してあるものではなく、なんとなく非日常的な空間に佇むといった感覚を体験する事ができました。森の中を歩きながら、私自身が感じている日常とは、本当に日常であるのだろうか・・・、という観念が生まれました。日常というラッピングに包まれている私の日々の包装をほどくと、こんな空間になるのかもしれない・・・、そんな事を帰りのバスの中で、うたた寝しながら考えていると、同じ、バスに乗り込んだ、スーツ姿の団体さんの話声が聞こえてきました。「なんだか、なんとコメントして良いのか分からない。」と言うのです。「○○包装資材産業のエントリーは、サイトからのみだったよね?」「何文字くらい書けばよいのだろう・・・」など、話の内容から、スーツ姿の団体さんはどうも就職活動中の学生さんのようです。そして、なんと○○包装資材産業は、私が勤める会社です。今年のエントリーに必要な課題の一つが、ギャラリーの「包装」展示についてのコメントだったようです。おかしな偶然に、出くわした特別日と称した有給休日でした。
物だけが包まれているわけじゃない